その家は、おそらく築100年は超えていたと思います。
私が毎日のように犬の散歩で通る旧街道沿いの道に、その古民家はありました。
通りに面した木製の格子戸。
その向こうには、四季折々の花が咲く庭。
よく手入れされた花壇と、低く刈り込まれた植木。
庭に面した縁側で、時々おばあちゃんが腰をかけて、静かに庭を眺めている姿を見かけました。
その姿も含めて、まるごと一つの「風景」になっていた、そんなお家でした。
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そのおばあちゃんは一人暮らしで、家で書道教室を開いていました。
表の壁に「書道教室」と張り紙が貼ってあって、夕方になると、小さな子どもたちやお母さんらしき人が出入りしているのを見かけたことがあります。
間口はそんなに広くないのに、庭の奥行きを見る限り、ずいぶん奥まで続いている造りのようでした。
聞いた話では、奥の方に小さな蔵もあるらしく、「いい古民家だなぁ」と思って見ていました。
数ヶ月前、そのおばあちゃんが亡くなった、という話を近所の方から聞きました。
一人暮らしだったこともあり、その日からしばらく、家は空き家になってしまいました。
「このお家、この先どうなるんだろう…」
そう思っていた頃、「お孫さんが帰ってきて住むらしいよ」という噂を耳にしました。
こんなすてきな古民家で暮らせるなんていいな~と思っていた私。
縁側でお茶を飲んだり、季節の花を少しずつ植え替えたり、
奥の蔵をちょっとしたアトリエにしたり…。と勝手に妄想。。。
ところが、ある日、いつものように犬と散歩をしていると、あの家の前に重機が止まっているのが見えました。
「え???」
ついに解体が始まってしまいました。
ご近所さんの話によると、
「解体して、新築を建てるらしいよ。もったいないけど、古いし大きすぎるからなぁ。
若い人は住まへんやろ。そりゃ今の新しい家がええわ」と。
確かにハウスメーカーが建てる、今どきのおしゃれな家は、暮らしやすいでしょう。
でも、古民家って、ほんとうにいいのになぁ…。
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築100年を超えるような古民家には、今ではなかなか手に入らない良質な木材が使われています。
太い梁、黒光りした柱、手触りのよい建具。
それらを組み上げたのは、当時の腕のいい大工さんたちです。
そして何より、同じような家を今から新しく建てようと思っても、それはもう不可能に近い。
解体が進むにつれて、格子戸も、庭を見渡す縁側も、あっという間に姿を消していきました。
古民家好きとしては「もったいないよ〜。あの縁側も、あの庭も、あの蔵も…」とため息。
古民家、残していってもらいたいな。
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